山下智久主演の爽快サイエンスミステリー TBS金10ドラマ
「インハンド」6話のあらすじとネタバレです。
紐倉哲(山下智久)と高家春馬(濱田岳)はメディカルサイエンス対策室の
アドバイザーとして内閣官房で働くことになった。
しかし、紐倉は相変わらずの愛想の悪さと変人ぶりだった。
今回の任務は人気、実力共に日本陸上界のエースである、
野桐俊のドーピング検査をするというものだった。
野桐は1人で1万kmの世界記録を更新し続けていた。
国民栄誉賞の授与も検討されていたが、
身辺調査をしておかないと賞を授与してから変な疑惑が出ては困るということだった。
紐倉はドーピング検査は専門の機構に頼めばいいと断わった。
しかし、あくまで身辺調査であることから大っぴらにそれらの機関に頼むことは難しかった。
高家は内閣官房で働くことを家族に自慢したから、任務を受けてくれと紐倉に懇願した。
「ドーピングってしちゃダメなの?」紐倉の一言に室長は2人に頼むのが心配になった。
紐倉と高家と牧野巴(菜々緒)は野桐の練習を見学にきていた。
野桐は毎回決めてある細かなルーティンをこなしていた。
すると、見学していた3人にコーチの東野が話しかけてきた。
3人は名目上、健康雑誌の取材ということでアポを取っていた。
すると、紐倉は勝手に競技場に降りていって、野桐に突然話しかけた。
「誰だ、お前は」
「お前とは失礼だな。ちょっと観察してもいいかな」
「邪魔すんな」
「ちょっとまて、僕はルーティンが見たいだけだ。説明は彼らがする」
紐倉と野桐はさっそく揉めてしまった。
野桐は少し変人だった。
野桐は床に裸で寝転がると気持ちがいいという変わった趣味を持っていた。
ファンだった高家は野桐にサインを求めた。
しかし、シャツに描かれたのはウンコの絵柄だった。
野桐は紐倉の義手には興味を示したが、3人への態度は素っ気なかった。
「野桐選手、伺いたいことがあります」
「なんだ」
「君はドーピングしてるの?」
「お前はバカか?仮にしているとしてしてると答える奴がどこにいる」
「じゃあ、自宅にいってもいいかな。ドーピングしていないんだったら、後ろめたいこともないだろう」
「お前、気に入らないな」
「何かやましいことでも?」
「調べるならとことん調べろ。自宅でも何でもみせてやる」野桐は自身満々だった。
高家は野桐を採血した。
紐倉は野桐の部屋を調べまわっていた。
野桐と紐倉はある意味、似た者同士の変人だったが、その態度は一触即発だった。
4人は以前の競技中の映像を見ていた。
野桐は喉が渇きやすいようだった。
練習の時、野桐はバラ色の人生というタイトルの音楽をかけていた。
それもルーティンの一つだった。
「今じゃ、これを聞かないと落ちつかねぇ。暴れたくなっちまう」紐倉は何かを考えていた。
高家による、血液検査と尿検査の結果、野桐にドーピングの痕跡は見つからなかった。
「ご自宅も伺いましたが、特にやましいところもありませんでした」室長は安堵していた。
スポーツ庁から野桐選手への調査は控えるように依頼があったからだ。
「いやね、相手は陸上競技会の顔だ。ヘタしたら調査していくこと自体イメージダウンに繋がりかねない」
これで調査は終了かと誰もが思った。
「いや、調査は続ける。野桐はドーピングしてる」
紐倉は野桐の6年前と現在のルーティンが変わっていることに気づいていた。
「一緒に見えるけど」
「君達、凡人にはわからないかもしれないが、明らかに変わってる。
それだけじゃない、野桐が聞いていた、バラ色の人生という曲は同じピアニストじゃない。
今、彼が聞いてるのは八田真一というピアニストが演奏している。
ちなみに僕は、八田真一の大ファンだ。
おそらく、野桐は強迫性障害だ。
やたらと偶数にこだわったあの部屋を見ればわかる。
厳密なルーティンを手順どうりに行わないと不安に駆られて暴れだす。
そんな野桐がルーティンを変えたのはよっぽどのことがあったはずだ」
ちょうど2年前、野桐のかかりつけのクリニックが変わっていた。
紐倉は根拠はないが、調査を続行する気満々だった。
紐倉と高家は野桐の練習している長野にきていた。
「またお前らか、しつこいな。何も出なかったんだろ」
「だから君についてもう少し観察させてくれ」
「勝手にしろ。邪魔したらぶっ殺す」2人は野桐の練習風景を撮影しながら観察を続けた。
「君を見続けてわかったことがある。
一見奇行とも取れるその行為にも全てに科学的な理由がある。
スタート前の軽いジャンプは余計な力を抜き、関節の稼動域を広げるため。
練習後に床で寝ていたのは広い領域を均一に冷やすことと、
冷やしすぎないことを大事にしてるということ」
「じゃあ、あれは?感謝の踊り」
「あれは彼なりのクールダウンだ。ストレッチも兼ねた」
そこまでいい当てた紐倉と野桐はいつのまにか仲良くなっていた。
相変わらず、紐倉と高家は野桐の練習に密着していた。
野桐はドーピング対策として口に含むものは全て記録していた。
「ハードトレーニングにマスコミ対応、それにドーピング検査の対策もしないといけない。
ドーピング検査は一概に正義とは言えない。
何もかも禁止にしたら、ほんとに病気になった時に薬も飲めなくなる
「でも、ドーピング検査必要だろ。皆平等のためにさ」
「そもそも平等ってなんだ?
こんな恵まれた環境でトレーニングしている人間とそうでない人間はそもそも不平等だろう?
高地トレーニングできる裕福な人間にはハンデを与えた方がいいのか?
むしろ、高地で生まれ育った人間にハンデを与えた方がいいのか?
そもそも高地トレーニングとドーピングは身体的に同じ結果をもたらすことがある。
物理は良くて、科学はダメなのか。ドーピングの判断はあやふやだってことだ」
気のあった紐倉は野桐を助手にスカウトした。
野桐は長野の生まれで、学生の頃から高地を走っていた。
紐倉は野桐にバラ色の人生の奏者を変えた理由を聞いた。
「君ほど、ルーティンにこだわる男が、実に不思議だ」
「好みなんて誰でも変わるだろ」
「好みが変わったのが2年前。ちょうど深谷クリニックで貧血の治療を始めた頃か」
野桐は少し反応したようだった。
「普通の食材にもチェックが入る時代が来るのか。
最近は、クリスパーキャスナインを使ってグルテンを減らした小麦なんかもできてる」
野桐の顔がこわばった。
2人が研究所に帰ると牧野が待っていた。
「東野コーチから聞いたわよ。勝手に野桐の練習について行ったんでしょ?
調査は終了っていったわよね。紐倉博士、いつまで調べるつもり?」
「血液検査や尿検査だけではわからない方法がある。
遺伝子ドーピング。遺伝子自体を組み替えて運動能力を向上させるドーピングだ。
遺伝子とは遺伝子情報の一つの単位だ。
全ての生物は遺伝子を持っていて、この遺伝子は個々の生物によって違う。
特定の筋肉が付く遺伝子や心拍が落ちない遺伝子などを取り込み、
ドーピングすれば、筋肉を増強したり、血液の酸素運搬能力を高めたりすることが理論的には可能だ」
「普通のドーピングとどう違うの?」
「検知することが格段にむずかしい」
「遺伝子ドーピングを見破る方法は、ドーピング前の生体サンプルを手に入れて、
その遺伝子を比較するしかない」
「なんで野桐がやってると思ったの?」
「この遺伝子ドーピングを一気に身近にしたのがクリスパー・キャスナインという最新技術だ。
この技術を使えば遺伝子を自由に切り貼りすることができる。
野桐はこのクリスパー・キャスナインという言葉に反応した。
そこで、今までの点と点が線で繋がった。
ルーティンの変化だよ。
野桐にはある時期を契機にルーテインの変化、曲の好みの変化が起きた。
それは遺伝子ドーピングで野桐の身体に細かな影響が出ていたからだ」
「好みが変わっただけじゃなくて?」
「強迫性障害の野桐がルーティンを変えるのはよっぽどだ。
それに野桐は異常なほどに水分を取っていた。
それは遺伝子ドーピングの影響で、赤血球が過剰に増え、
血液がドロドロにならないようにするためだろう」
「その遺伝子ドーピングは野桐だけでできることなの?」
「野桐はあくまでランナーだ。ラボも必要だし、専門家の知識も必要になってくる」
牧野は単独で東野コーチの動向を探っていた。
東野から深谷クリニックには不自然な金の動きがあった。
3人は深谷クリニックに向かった。
そして、こっそり病院のパソコンのカルテを携帯で撮った。
その頃、室長は上から牧野達がまだ野桐の身辺調査をしているのかと釘を刺された。
3人は室長から怒られた。
「ですが、室長。紐倉のいうとおり、野桐は遺伝子ドーピングをしている可能性が高いです。」
「でも、受賞してからクロと判ればうちは内閣府から叩かれますよ」
サイエンス・メディカル対策室は調査を続けても止めても立場が厳しくなりそうだった。
紐倉はドーピングを悪いものだとは思っていなかった。
だから、受賞をあげてしまえばいいといった。
紐倉は野桐の様子を思い出していた。
3人は野桐の実家に向かった。
そこにはファンからの手紙や贈り物がたくさん届いていた。
野桐は4年前のレース中に転倒して復帰は無理かと思われていた。
しかし、野桐は奇跡の復帰を遂げた。
「ところで、野桐選手は次のレースが最後なんですか」
「誰がそんなこといったんですか。そんなこと絶対ないと思いますよ」
野桐の父親は何かを誤魔化していた。
紐倉は野桐家を探索していた。
すると、国立がん総合センターからの封筒が見つかった。
あて先は父親の名前だった。
この辺りは蛍が有名だった。
それを見た高家はセンチュウと似ていると言い出した。
「そうか、オフターゲット効果だ。高家、野桐から採取した検体は残ってるな。彼自身に大きな問題が起きてる」
大会当日、紐倉と高家は野桐の元へやってきた。
「また、お前らか。どうだ、何かわかったか」
「あぁ、やっとわかった。君は遺伝子ドーピングをした。」
「証拠は」
「自分でも身体の異変に気づいてるだろ。
クリスパー・ナインを使った遺伝子ドーピングは諸刃の剣だ。
狙いではない遺伝子に間違って傷が入ってしまうこともある。
オフターゲット効果だ。
採取した血液を調べなおしたら、君は遺伝子ドーピングをした結果、悪性リンパ種になったんだ。
だからトレーニングの最中に、首や脇の下をやたらと触っていたし、
あれだけ徹底したルーティンさえも変えて、足の付け根を触っていた。
それらはすべて、リンパ節がある場所だ」
「野桐選手、お願いします。このレースには出ないでください」
「君の実家にいった時、お父さんがHLAの適合検査を受けていることを知った。
お父さんの増血管細胞を移植すればまだ助かる道はある」
「いや、俺は走る。親父とはHLAは適合しなかった。
だから、俺にとってはこれが最後のレースなんだ」その頃、観客席で野桐の父親は祈っていた。
「ファンには感謝していないわけじゃない。
ただ、それより大事なことがあるだけだ。
自分という人間の限界を超えたいんだ。
誰よりも0.1秒でも早く走りたい。
その景色を見てみたい。それだけだ。後悔はしていない」
「見てこいよ、その景色」
「心配するな」
「心配してないよ」
「必ず勝ってやるよ」
「頼んでないよ」野桐はふっと笑った。
「お前、気にいらねえな」
「僕は嫌いじゃないぞ」
野桐はレースに出場した。
残り4周、野桐は突然、足取りが重くなり、そして倒れた。
紐倉と高家はそのまま会場を後にした。
ニュースでは野桐が悪性リンパ種で現在、
意識不明の重態であることを告げていた。
高家は呟いた。
「なんだかわからないなぁ。あんなに恵まれた身体を持ってなんでドーピングなんか」
「彼にとってスピードは力だった。
スピードは喜びだった。そしてそれは、純粋な美ですらあった」
「何それ」
「かもめのジョナサン。野桐の愛読書だ。
野桐にとってドーピングは走りを追及する手段の1つでしかなかった。
正しいも悪いもない、でも、あの時、野桐選手を止められてたら」
「バカだな、君は。あの時、僕たちにできたのはあそこまでだ。
結果がどうあれ、野桐は走る覚悟だった。
実はな、野桐が好きになった、ピアニストの八田。
彼はアルコール依存症なんだ」
「皮肉だね」
「でも八田の演奏はすばらしい。彼が依存症だろうが、
曲がすばらしいことには変わりない」
「そうだな、彼はすごい選手だった」
そこに牧野の携帯に電話がかかってきた。「ちょっと!お先に。娘から」
その一言に驚く紐倉と高家だった。
感想
何だか野桐の傲慢な態度と裏腹に少し切ない話でした。
そこまでスピードを求める天才の美学はすさまじさを感じますね
。珍しく、変人同士の紐倉と野桐が意気投合していたのも面白かったです。
ドーピングも遺伝子レベルでできるところまできているとは驚きです。
それから牧野に娘がいたのには紐倉と高家同様、驚いてしまいました。
なんで結婚してないと思い込んでいたんだろう?